芥川賞と直木賞の違いがイマイチ分からないという方は多いみたいです!

そこで、この記事では分かりやすく両者の違いを説明していきたいと思います。



芥川賞と直木賞の違い

出版不況と言われ、読書離れの傾向が強い昨今ですが、普段あまり本を読んだことのない人でも、「芥川賞」と「直木賞」の名前くらいは聞いたことがあるのではないでしょうか。

毎年2月と8月の年2回発表される、純文学と大衆小説(娯楽小説)の作品賞です。

発表時期には受賞作、作家ともにテレビや雑誌等への露出が増え、一般的な知名度があがることにより、それが本の売上や発行部数に直結します。

厳正な選考の上に決定される賞ではありますが、誤解をおそれずにいえば、出版業界や書店にとっては年に2回のお祭りです。

また作家にとっては孤独な執筆作業の励みになるでしょうし、(受賞後は芥川賞作家、直木賞作家、と呼ばれるようになります)受賞作は、ある一定の評価が与えられた作品として、その後、人々の目に触れやすくなります。

芥川賞と直木賞の歴史

両賞とも、文藝春秋社を創設した作家、菊池寛によって、1935年に設立されました。

芥川賞は、作家の芥川龍之介から。直木賞も同じく作家の、直木三十五(なおき さんしゅうご)からの名から冠されました。

第二次大戦中は一時中断され、また、まれに<受賞作なし>の時期もありますが、両賞は設立より現在まで継続され、幾多のベストセラー、ときに時代を揺るがす問題作も送り出しています。

賞設立者は菊池寛

設立者の菊池寛について軽く触れます。彼は作家であると同時に、敏腕な実業家でもありました。

つまり芸術を志すと同時に、作家(当時多く作家が無頼的な生活を送っていました)に欠けている、実務感覚を持ち合わせていました。

彼は、若い作家たちに金銭的な援助や才能の育成を行い、その地位の向上を促進しました。賞の制定はそのような考えの一環と言えます。

戦前、戦後の変革期に、芸術至上主義だけでは、作家個人、また文化して行き詰ってしまうことを識っていたのです。

また、諸説ありますが、2月と8月に本の売上が落ちるので、雑誌の宣伝や売上増を目的とした賞の制定だったとの話もあります。

そういった経営者としてのしたたかな狙いも多分にあったのではないかと思います。



賞金

受賞作に選ばれると、正賞の懐中時計および、副賞に賞金100万円が貰えます。

これは金銭的にはやはり少額に思えます。

ただ、作家個人としては、知名度や印税増が期待できるのと取材等の副収入も増えるので、経済面の負担が軽減されるのではないかと。

(特に純文学の作家は経済的に専業が難しい方が多いです。)

もっとも正賞が懐中時計なわけですから、金銭云々よりも栄誉の方が重んじられているのだろうと推測します。

選ばれる作品の違い

まず、芥川賞は、純文学です。「純粋」な「文学」です。

わかりそうでわからない言葉ですよね。

娯楽性をもったストーリー展開で魅せるよりも、文体や表現方法、作品テーマで魅せるスタイルと言えば伝わるでしょうか。

要するに芸術性の高い作品です。

また、多少、粗削りでも、その時代特有の感性を含む作風が評価される傾向にあります。加えて、芥川賞は、新人賞という位置付けです。

それにたいして直木賞は、大衆小説です。読みやすく娯楽性の高い作品がほとんどです。

ただし、SFや純粋な推理小説はどちらかというと除外傾向にあります。

こちらはキャリアのある新進~中堅作家以上に与えられることが多いです。

実際には、純文学、大衆小説の境界は昔から曖昧です。

社会派推理小説を得意とする、松本清張が芥川賞を受賞していたり、作風が純文学寄りでおそらく本人もそのこだわりのある山田詠美が直木賞受賞だったりと、このようなケースはたくさんあります。

明確な区分はないように思います。

選考方法

日本文学振興会から委託された、文藝春秋の編集者による選考スタッフにより、予備選考を行い、作品を5~6作程度に絞ります。

その結果が、著名作家で構成される選考委員に渡り、東京築地の料亭「新喜楽」にて、最終審議が行われます。

受賞させたい作品には「○」、積極的に反対しない作品には「△」、ふさわしくない作品には「×」の評価を持って集まります。ときに喧嘩に近い議論になることもあるようです。

芥川賞受賞作は、文芸春秋に全文掲載され、直木賞受賞作は、オール読物で全文または一部が掲載されます。

また、それぞれの選考委員による選評も同時に記事にされます。

選評は選考委員によっては、一方的で辛辣なものもあり、物議を醸しだす場合もあります。

過去、それにより、直木賞ノミネートを辞退した作家もいました。

専門分野以外の作風を理解できない選考委員の問題が根底にあるようです。どんな分野でも芸術の客観的な評価というのは難しいものなのでしょうね。

次にそれぞれの賞の過去の受賞者、受賞作を3つあげます。まずは芥川賞から。



芥川賞の過去の受賞者、受賞作品

・石原慎太郎 「太陽の季節」

芥川賞が一般的に有名になったのは、戦後10年余りが経過した1956年のこの作品からです。

無軌道で反倫理的、無感動な若者像は当時、新しく鮮烈な価値観に映ったことでしょう。また本作品は映画化され、端役で弟の石原裕次郎がデビューします。

・村上龍 「限りなく透明に近いブルー」 

「太陽の季節」と同じくらいセンセーションを巻き起こした作品です。

70年代の福生で暮らす主人公の自堕落な生活(ドラッグ、暴力、乱交パーティ等)が描かれます。喧噪に明け暮れる生活が、不思議とただただ静かに、透明に流れる青春小説です。

・綿矢りさ 「蹴りたい背中」

「さびしさは鳴る。耳が痛くなるほど高く澄んだ鈴の音で鳴り響いて、胸を締めつけるから~」とはじまる書き出しは天才として言いようがありません。

ここだけで本作品は一読に値します。思春期特有の寂しさを感じながらも斜に構えている感じが実に瑞々しく描かれます。

多数ある芥川賞受賞作の中で、ジャンルとしては、「青春小説」に分類されるであろう作品を挙げてみました。

石原慎太郎は受賞時23歳、村上龍は受賞時24歳、綿矢りさは受賞時なんと19歳(最年少受賞者)でした。三作とも、読むとその時代の空気感が伝わってくるようです。

次に直木賞の受賞者、受賞作をあげます。

直木賞の受賞者、受賞作

・野坂昭如  「アメリカひじき」「火垂るの墓」  

童謡「おもちゃのチャチャチャ」の作詞者でもある野坂昭如の「火垂るの墓」は、スタジオジブリ制作で有名な、アニメ映画の原作です。

原作も素晴らしいです。抑制された文体に滲み出る悲しみが読んでいて辛くなります。また、同著内の「アメリカひじき」も戦後を描いた秀逸な作品です。

・東野圭吾「容疑者Xの献身」  

東野圭吾の推理小説で、「ガリレオシリーズ」の第3弾です。推理小説として一流であると同時に、人間のかなしみが描かれています。

映画化されており、ガリレオこと湯川役に、福山雅治、石神役に堤真一のキャストです。

原作を読んだ方なら、石神役に堤真一はイケメン過ぎると思う筈です。その不器用過ぎる愛情が涙を誘う作品なので。

・池井戸潤 「下町ロケット」  

元銀行員の作家、池井戸潤による、社会派小説です。

理不尽な特許侵害、資金繰り、製品開発、そして、巨額な本を投入した大企業との対峙。

町工場ならではのアイディアと技術力、熱い思いで対決します。根底には、夢をあきらめない、というシンプルで力強いメッセージがあります。

また作者は、テレビドラマにもなった「半沢直樹」(原作名は、俺たちバブル入行組)の原作者としても有名ですね。

どうでしょうか?

有名な作品ばかりです。芥川賞もそうですが、直木賞には映像化されている作品が非常に多いです。映像作品を観た後に原作を読んで違いを見つけてみるのも読書の楽しみですね。

まとめ

芥川賞、直木賞の違いについて、わかりましたか?

歴史に「もしも」は禁物ですが、もしも芥川賞、直木賞がなかったとしたら、受賞作のベストセラーや映画化作品、またそれらに端を発した様々な流行や文化的発信がなかったとしたら、日本のエンターテインメントはさぞ味気ないものになっていたことでしょう。

もしもあなたが本を読みたいけど、どんな本を手に取ったらよいかわからない、と言うのなら、まず芥川賞受賞作か直木賞受賞作を読んでみたらいかがでしょうか。

やはりそれなりの選考を超えてきただけあって、実際に読んでみると面白いものばかりですよ。まずは年代の新しいものからさかのぼって読んでみることをオススメします。