この記事ではイニシエーション・ラブのネタバレ解説をしていきます。

・最後の2行とは?

・イニシエーション・ラブの意味とは?



ネタバレ解説

イニシエーション・ラブの醍醐味はなんといってもラスト2行でつくりだされる大どんでん返しです。ラストの2行で物語は全く違うものへと変貌を遂げてしまいます。

いや、1行で十分かもしれません。その1行とは?

美弥子が放つ「……何を考えてるの、辰也?」

というセリフ。この一言で読者はだまされていたことに気付く―

この作品には叙述トリックが使われていますね。

叙述トリックとは簡単に言えば読者にミスリードさせるテクニック。

あえて名前をふせたり、一部の描写をぼやかしたり、隠したりして読者を間違った方向へと導いていくもの。

これがうまければうまいほどカタルシスは大きくなりミステリーとしての質は上がります。

 

ではイニシエーション・ラブはどうでしょうか?

この作品には名前の仕掛けが使われています。キーワードは「たっくん」と「鈴木」。

読者はside-Aとside-Bの主人公が同一人物だと思って読んでいるのですが、実は全くの別人。side-Aの「僕」は鈴木夕樹であり、side-Bの「僕」は鈴木辰也であったということです。

AとBどちらでも繭子からは「たっくん」と呼ばれており、周囲の人間からは「鈴木」と呼ばれていた。

そして最後に新しい恋人として美弥子を出させ、「辰也」と呼ばせる。ここで読者は同一人物でないことに気付く。うまい具合にミスリードさせられてしまったというわけですね。




伏線の考察

ここでは伏線の考察をしていきたいと思います。イニシエーション・ラブでは全体に伏線が散りばめられています。その伏線をみていきましょう。

 

・たっくん

デートでの会話中、繭子は夕樹のことを「タック―」と呼んで言葉を詰まらせてしまう場面があります。それは辰也のことを「たっくん」と呼んでいたから。そこで繭子は夕樹の「夕」の字がカタカナの「タ」に見えることから夕樹のことも「たっくん」と呼ぶようになります。

 

・繭子の指輪

最初の合コンでつけていた指輪がside-Aのラストでははずされています。それは辰也がプレゼントしていたものだから。side-Bで繭子は辰也にプレゼントしてもらった指輪を送り返しています。

 

・デートの曜日

繭子と夕樹のデートは決まって金曜日でした。それはなぜか?土曜日と日曜日は辰也と会うためです。辰也が東京から静岡に帰ってくるためデートは金曜日にしていたのです。

 

・繭子の部屋にある本

side-Aで明らかに彼女の嗜好とは異なっている本として「アインシュタインの世界」という本が出てきます。なぜそんなものがあるのか?それは繭子の本ではなくて辰也の本であったから。辰也は大学で物理学を専攻していたと語っています(夕樹は数学)。逆にside-Bではハードカバーの本が出てきます。それは夕樹と本の交換をしていたから。

 

・クリスマス

side-Aで夕樹はキャンセルがでたということでターミナルホテルを予約することができます。そのキャンセルをしたというカップルが繭子と辰也というわけです。

 

・日焼け

side-Bで辰也が繭子の日焼けを指摘する場面があります。それは繭子が夕樹たちと海に行って遊んでいたから。

 

・電話

side-Bで辰也は繭子に別れたあと電話します。しかし、電話に出た繭子の「たっくん?」という口調があまりにも普通でした。電話が鳴ったからたっくんからだろうというような。なぜそんな口調になったか?夕樹がいつも繭子に電話していたから。

 

・繭子の妊娠

side-Aで夕樹は繭子からデートの約束をキャンセルされてしまいます。体調を崩したという理由で。それは堕胎手術をするため入院するから。やつれて見えたのも堕胎手術をしたからであるといえます。タバコを一時吸わなかったのも妊娠が発覚していたから。

 

・男女7人物語

side-Aとside-Bの両方で「男女7人夏物語」と「男女7人秋物語」の話がよく出てきます。これに気付くとこの物語の時系列が同時進行であると分かります。

 

いかかでしょうか。結構さらっと出てくるので1回読んだだけでは分からないかと思います。もしかしたらまだまだ伏線が隠されているかもしれません。何回か読んでみて伏線探しをされてみては?

 

タイトルの意味は?

イニシエーション・ラブ。

イニシエーションの意味とはなんでしょうか?

それは美弥子が辰也に語っています。イニシエーションとは通過儀礼

子供から大人になるための儀式。初めて恋愛を経験したときには誰でも、この愛は絶対だって思い込む。

でも人間には―この世の中には、絶対なんてことはないんだよって、いつかわかるときがくる。それをわからせてくれる恋愛のことをイニシエーション・ラブ。

本文より一部抜粋しましたが、イニシエーション・ラブをこう表現しています。

作中にあてはめると繭子と辰也の恋愛は通過儀礼の恋愛だったというわけです。繭子は夕樹にいくための辰也は美弥子にいくための。もしかしたらあなたが今、付き合っている恋人はイニシエーション・ラブなのかもしれません。

人間には―世の中には絶対ということはないのですから。あなたの恋人は裏で何をやっているのでしょうか。